岩名泰岳の表現の前で、私たちは絵画の力とは絵画を描く情熱であるというロマンティシズムに、さらに言えば、抽象のもつロマンティックな力に回帰させられるだろう。20世紀初頭にあった芸術の内省と爆発が21世紀初頭にも脈々と流れ続け、時空を超えて人々の胸を打つ。そのセンセーションは彼の現在の拠点であるデュッセルドルフを越えて、ロマンティシズムの嵐-とは言え静かなる内省の嵐であるが-を理解する世界へ伝わっていくであろう。日本固有の環境の中で醸成された絵画への持続する情熱こそ、グローバルな時代の平板な流行とは別の、現在の絵画表現における普遍的な問題と符合するのであろう。(一部抜粋)


永草次郎(美術評論家、帝塚山学院大学教授)